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オーバードーズとは?オーバードーズの影響や背景を解説します
2025/10/27

近年、若い世代を中心にオーバードーズ(以下、OD)が深刻な社会問題となっています。市販薬を過剰に服用する行為は、身体への影響だけでなく、心の問題とも深く関わっています。
この記事では、ODの基礎知識から背景まで詳しく解説します。
なぜオーバードーズ(OD)が問題になっているのか
ODとは、医薬品を決められた量を超えて大量に服用してしまう行為です。例えば、かぜ薬や咳止め薬といった市販薬の過剰摂取が該当します。一時的に気分がよくなる、幻覚が見える、眠気を催すなどの作用が生じることから、精神的な苦痛から逃れるためにODを行ってしまうケースが10代・20代の若い世代を中心に広がっています。
高校生における市販薬乱用のデータ(2021年)
| 性別 | 過去1年での乱用経験の割合 |
|---|---|
| 男性 | 1.2% |
| 女性 | 1.7% |
| 全体 | 1.6% |
国立精神・神経医療研究センター「薬物使用と生活に関する全国高校生調査2021」を基に作成
このデータによると、高校生の約60人に1人の高校生が経験している計算となり、決して看過できない状況といえます。
出典:国立精神・神経医療研究センター「薬物使用と生活に関する全国高校生調査2021」
ODの危険性
ODによる症状の例としては以下が挙げられます。
● 吐き気や嘔吐
● 精神の興奮状態
● 意識障害
● めまいや立ち眩み など
これらの症状は、服用直後から現れる可能性があります。さらに深刻なケースでは、肝障害・腎障害といった臓器不全や呼吸困難を引き起こし、最悪の場合は死に至る危険性もあります。また、咳止め薬などの市販薬の一部には、依存しやすい成分が含まれている点も問題です。医薬品を繰り返し使用するうちに効果が出にくくなり、使用量や回数が増えて依存症に陥ってしまうケースも見られます。
ODを防ぐために薬剤師ができること
薬剤師は地域の健康を守る専門職として、OD防止に重要な役割を担っています。総合感冒薬や解熱鎮痛薬など、ODの対象となりやすい市販薬を正確に把握しておき、若年層がこれらの医薬品を購入する際には、以下を確認することが重要です。
若年層への確認事項
● 購入者の氏名と年齢
● 他の薬局や店舗での医薬品の購入状況
● 適正使用のために必要な数量を超えて購入しようとする場合は、その理由
またODの可能性があるお客様に対しては、販売を判断するだけでなく、信頼できる相談相手として寄り添う姿勢も大切になります。
ODを防ぐために家庭や地域でできること
家族や身近な人がODかもしれないと感じたときには、いくつかの対応方法があります。
家庭や地域でできること
● 相談相手になる
● 専門機関に相談する
● 医薬品やODへの理解を深める
まず、相談相手になることが重要です。相手の言うことややっていることを否定したり非難したりせず、寄り添う姿勢で接することが欠かせません。次に、精神保健福祉センターや各都道府県の薬務課などの専門機関に相談することも有効な手段です。加えて、医薬品やODについて正しい知識を学び、理解を深めることも予防につながります。
決して個人や家庭だけで抱え込まず、周囲の力を借りながら問題に向き合う姿勢を持つことが何よりも大切です。
まとめ
ODは若い世代を中心に深刻な問題となっており、市販薬への依存は心と体の両面に深刻な影響を及ぼします。薬剤師による適切な販売管理や声かけ、家庭や地域での見守りと早期の相談対応が予防の鍵となります。
ODは「薬を正しく使う」意識で防げる問題です。薬剤師は薬の専門家として、みなさんと一緒に安全な使い方を守ります。どうぞ気軽に薬局や薬剤師にご相談ください。