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2025/06/10

医学の進歩に伴い、さまざまな病気に効果のある薬が開発され続けています。しかし、近年は世界中で薬不足が深刻化しており、病院で受診しても必要な薬を受け取れない事態に直面する人も少なくありません。
そこで今回は、薬不足の現状や原因について、個人でできる対策と共に解説します。

薬不足の現状は?

最近では薬不足についてニュースや新聞等で取り上げられることがあります。では、現在の薬不足はどのような状況なのでしょうか。
ここでは、日本と世界に分けて薬不足の現状を紹介します。

日本の状況

厚生労働省が調査、発表した「医療用医薬品の安定的な供給の確保」によると、2024年10月の時点で医療用医薬品の約5分の1が限定出荷・供給停止となっています。薬不足問題は2020年から深刻化し、2025年現在も解決には至っていません。
物価高騰による製薬企業の収益悪化や医薬品の品質問題などが薬不足の要因として考えられます。薬不足の要因について、詳しくは後述いたします。

世界の状況

薬不足は、日本だけではなく世界的な問題です。特に欧州ではジェネリック医薬品の収益性が低く、メーカーは生産量を増やせません。コストは上がっているにも関わらず、ジェネリック製品そのものの価格は変わらないため、新しい生産ラインを導入する費用が確保できない状況です。
そのため、世界に出回っている薬の多くはコストの低いインドや中国で作られています。世界の国々が自国だけでの製薬は困難になり、インドや中国に頼らざるを得ない状況です。

日本で特に不足している薬は?

現在の日本で特に不足している薬は、咳止めや痰切り・抗生物質・高血圧の薬・精神科系の薬などです。これらは需要が高い薬ではあるものの、生産が追いついていません。
また、ジェネリック医薬品も不足しています。これは、人件費や原価などの生産コストとジェネリック医薬品を提供する際の価格が見合わないためです。収益性の低いジェネリック医薬品を製造する企業は増えないため、薬不足の状況が続いています。

薬不足の原因は?

薬不足の原因は複数考えられるものの、主な原因は以下の通りです。

・品質問題による製造中止
・物価高騰による収益悪化

それぞれについて詳しく解説します。

品質問題による製造中止

2020年、ある製薬会社が作った爪白癬の治療薬として使用されるイトラコナゾールに、睡眠導入剤の成分が大量に混入していたことが判明しました。
この事件の影響で他の企業も一斉に品質調査が行われ、一部のメーカーでは品質管理基準を満たさない事例が発覚しました。その結果、生産停止や出荷制限が実施されたことが、薬不足の要因の一つです。

物価高騰による収益悪化

原材料価格が大幅に上昇する一方で、薬価は引き下げられている点も原因です。製薬企業の利益率が低下し、特に収益性の低い医薬品の生産が縮小されたことで、薬不足が進んでいます。
薬を安価で提供することによって医療は受けやすくなる一方で、製薬企業の収益が悪化することで薬不足が深刻化しています。

薬不足に対して個人ができる対策は?

病気やケガで薬が必要な際に、薬不足で薬を受け取れないことは避けたい事態です。
そこでここでは、薬不足に対して個人ができる対策を2つ紹介します。

かかりつけ薬局を持つ

自分の体調や治療内容をかかりつけ薬局に把握してもらうことは、治療に必要な薬を確保してもらうことにつながります。かかりつけ薬局を持つことで、薬局側は患者さんに必要な薬を把握し、その在庫状況を意識できるためです。
長期的に治療が必要なケースでは、かかりつけ薬局に通う頻度に合わせて薬を準備してもらうことで、薬不足の影響を減らせる可能性があります。

残薬を有効活用する

家庭内で余っている薬を適切に管理して、いざ必要となった際に活用することも薬不足対策につながります。
薬局から薬を処方してもらったものの、早く治って使い切らなかったというケースは少なくありません。家庭内に余っている薬があれば、かかりつけ薬局に相談して服用してよいかを確認します。
飲み合わせの相性もあるため、個人で判断せず必ず薬局に相談しましょう。

まとめ

現在、さまざまな要因で世界的に薬不足が深刻な問題となっています。日本も例外ではなく、いざ薬が必要となった際に在庫が無いというケースは他人事ではありません。
薬不足の状況下でも必要な薬を確保できるように、個人でできる対策を実践しましょう。



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